ガラス作家の師匠

2月の始めに、ガラス工芸の師匠である、伊藤けんじさんの個展が、

銀座のギャラリー田中さんでありました。

師匠は、ここ数年大きな動物の頭を中心に作っていて、でも、もちろんそれ以外の素晴らしい作品も展示しています。

 

今回は、川崎にある工房をそろそろ閉めるような話も出ていて、

銀座での展示も最後かもと言うことでした。

 

私はもちろんとても楽しみにしていて、ワインを持って伺いました。

私は金箔を駆使した作品が好きで、箔の使い方を研究しているのですが、

師匠は、以前は大量に金箔を消費していたと言う話で、でも、最近はそういう作品を見かけませんでした。

 

いつも、工房では、色々な作品を作ってくれるのですが、展示となれば、もっと凄い作品が期待できます。

案の定、びっくりするような作品ばかりでしたが、珍しく金箔を使った作品が多く、

私はどれも目移りしましたが、一つ購入しました。

 

写真より、実物の方が良いです。こういうのは、写真が難しい。

まるで、オリエントのシルクのようで、ヴィロードと合わせてドレスを作りたくなるような美しさです。

でも、これは花器なので、ヴィロードの様な花びらの、クリムゾンの薔薇が似合うかも。

 

師匠はいつも、品のある作品が良いと言います。そして、進化しなくてはいけないとも。

私はそれを、精神性の高さだと理解しています。

 

師匠の背中を見て、ここまで来ました。それは、実際にも、グローリーに向かう師匠の背中でした。

他の誰かでは、とうていできなかっただろう域にまで引き上げてもらいました。

ありとあらゆる技法を学び、今の私があります。でも、まだ序の口。もっとすごい作品を作るつもりです。

 

それでも、工房が無くなれば不自由になります。他へ行かなくてはなりません。

師匠は、軽井沢の工房に籠もるようです。もし、大作が作りたければ、そこへ行けば良いだけの話です。

ただ、もう、自分の力で歩き始めなければいけないのは確かです。

思い通りに行かないガラスの付いた吹き竿を持って、助けてくれとは言えないのです。

 

きっと、そんな時は、自分自身に言うのです。「慌てるな!こんな時、けんじさんならどう言うのか考えろ!」

今までとは違う、けんじさんを知らないアシストに助言を求めても、答えが返ってくるかわからない。

きっと、けんじさんの声が聞こえてくると、信じています。

 

本当に精神性の高いアーティストというのは、純粋かつ高潔な魂で結びついているはずなのですから。